※フランのキャラソンネタです。



どこだろう、ここ。気付かない間に随分と遠くへ来てしまったのだろうか。
赤い落ち葉を踏みしめる度に、深いところへ一層足を踏み入れてしまうような、嫌な気配を感じたが他にすべきことも思いつかない。
とりあえずあいつを探さなくては。

「……、センパイ、ベールセンパーイ」

不意に森の奥から聞こえた探し物の声に、ベルフェゴールは身を乗り出してフランの緑色を探そうと目を凝らす。
よく見えないのは前髪のせいではない、たぶん。そう自分自身に言い聞かせながら歩む速度を速めた。
こういう面倒なことは、きっとあいつのほうが得意だし、それなりに心配だから。
うっそうと茂る伸びきった雑草をかき分けて進み続けると、ふいに目の前が開けた。そこにいたのは。

「もー、なにやってるんですかー」
「なかなか来ないんで心配しちゃいましたよー」
「センパイが誰かに殺されちゃったんじゃないかと思ってー」
「まっさか、ヴァリアーで一番天才のセンパイがねー」
「いたいけな後輩のミーのために体を張れないなんてー」
「ありえないですよねー」
「でもー、ミーをこれだけ待たせるなんてさすが堕王子ー」

色とりどりのカエルを被った、たくさんのフラン。数は両手の指の数を超えている。
あまりの状況にベルフェゴールは言葉を失って、ただあんぐりと口を開いた。
そんな様子を見てまたカエルたちがかしましく鳴き出す。

「見てくださいー、あのベルセンパイのアホ面ー」
「なんですかあの顔ー、ほんと笑えますねー」
「記念に写真でも撮っておきましょー」
「じゃあミーは動画を撮りますー」
「あ、あとからミーにも送ってくださいねー」

これ、どういう状況よ。全然わかんないんだけど。
とりあえずベルフェゴールは「説明しろ」と声を張り上げた。
木の枝の上で気だるそうに足をぶらつかせている水色のカエルを被ったのフランがそれに答える。

「ここはー、ミーのワンダーランドですー」
「……ワンダーランド?」
「不思議の国ってやつですよー」
「ちょっとは自分の頭で考えやがれ、ですー」
「堕王子は空気を読まないんで困りますねー」

普段の何倍にもなって返ってくる毒舌の数々に、思わず耳を塞ぎたいと思ってしまった。
まだそんなに時間は立っていないとは思うが、すっかり疲労してしまったベルフェゴールをよそにして、カエル同士で話は続いていく。

「せっかくだから、ミーがセンパイと遊んであげようかと思いましてー」
「センパイでもちゃんと理解できるように、単純なゲームにしたんで心配は無用ですー」
「ルールは簡単ですー、ミーを捕まえてくださいー」
「もしミーのことを捕まえられたらー、その時は好きにしていーですよー」
「どーせ、センパイが考えることなんてロクなことじゃないでしょうけどー」
「なんでも言うこと聞いてあげますしー」
「別に悪い条件ではないですよねー?」

もう、ここまで暴言を浴びせられると、その口の達者ぶりに唸ってしまう。
構わないから早く始めようぜとナイフとワイヤーに手をかけたその時、顔と顔が触れ合うのではないかと思うほど近くにフランが現れた。
後ずさって初めて、現れたフランがいつもと同じ黒いカエルを被っていることに気が付く。

「まー、センパイが生き残れたら、の話ですけどー」

ほんとにカワイクないコーハイだな。どこまでセンパイのオレを馬鹿にする気だ。
ここまで人を腹立たせておいて、ただで済むとは思ってないよな?
上等だと今度こそナイフを握った、そのとき。


……目が覚めた。
(夢……?!)
何度目を瞬かせてみてもそこにあるのは見慣れた自室の天井。そして隣を見やればカエルを被っていないフランが寝息を立てている。
(…まあ、そうだよな、あんなのありえな、)
ぐらりと視界が揺れる。そうしてベッドの側に落ちてくる、大量で色とりどりのカエルの被り物。
それはベルフェゴールの口元から笑みを消し去るには十分すぎるものだった。

その夜、アジト全体にベルフェゴールの悲鳴が響き渡り、悲鳴で起こされた不機嫌なザンザスが八つ当たりしたためにアジトの一角が使用できなくなってしまったとか、そうでないとか。

(ていうかセンパイ、いくら寝起きでも幻術だってわかるでしょー……)



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あのキャラソンはすごかった…!